1.レスポール・ジュニアの概観 Gibson Les Paul Jr (1954-63)
歴史 History
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もともとレスボール・ジュニアというモデルは、ソリッド・エレクトリック・ギターの市場価値を確認したギプソン社が,その製品ラインナップの拡充のためレスポール・ラインのうちのビギナーズ・モデル(普及版)という位置づけで企画されたもので(ソリッド・ギターの入門機種という性格が与えられていた)、1952年にデビューしたレスポール・ゴールドトップ登場から2年後の1954年に生産開始された。さらに翌55年には,ジュニアとゴールドトップの間に位置するスペシャルが発表されシリーズのバリエーションが広がった。 ジュニアはスチューデント・モデルとして(student
solidbody model)製作コスト,販売価格の大幅な低減を図るため無駄な装飾を廃し.必要最低限のハードウエアを効率良く配置するなどの方法で、シンプルな構造をとってはいるが、木部の加工精度などは上級機種そのままに、ここにもギプソンの高度なノウハウはつぎ込まれ、現在の観点からはとても普及版とは言えない高いクオリティを持つギターとして登場した。ギプソンの象徴ともいえるクラフツマンシップは他の高級機種となんら変わらなかったのである。また、いくらコストを落としているといえど、その価格から考えてもメーカーにとっては利幅はほとんどなかったと想像しうる。 ※従来、ジュニアのトップのカラーはブラック・サンバーストと呼ばれてきたが、実はトップ周辺の黒く見える部分は赤系のダークブラウンである。このブラックに見える部分は経年褪色によって左写真のようにブラウンの下地が浮き出できている。特に54―55年のモデルにこういう褪色のしたモデルが多い。 |
その後58年12月のモデル・チェンジでダプル・カッタウェイになり、色もチェリーレッドに変更された。さらに61年には2回目のモデル・チェンジが行なわれ.この時にポディはSGシェィプとなった。ただし、SGシェイプにもかかわらず、モデル名はレスポール・ジュニアのまま。一般にはSG/レスポール・ジュニアとも呼ばれる。その後の63年にはモデル名自体がSGジュニアに変えられ、これをもって9年間に渡るオリジナル・レスポール・ジュニアの生産は終了となる。
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レスポール・ジュニア59年型 |
レスポール/SGジュニア62年型 |
発表から2度のモデル・チェンジを経て生産中止にいたるまでの9年間、レス・ポールジュニアの人気はなかなかのもので、このモデルのセールスはその上級機種をはるがに凌ぐものであった。
メーカー公称出荷本数は、54年からのシングル・カッタウエイが約11,300本、58年からのダプル・カッタウエイが約7,900本、61年からのSG/レス・ポールが約6,100本であった。TVは,全期間を通じて5,000本ほど製造されたと推測される。59年に発表されたスチューデント・モデル、メロデイメイカ−・シリーズを除けば、60年代のギプソン・ソリッド・ギターの中では、異例のハイ・ぺースで生産された機種と言えるだろう。
| 1954 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | |
| ジュニアSC/サンバースト | 823 | 2839 | 3129 | 2959 | 365 | |||||
| ジュニアDC/チェリー | 2043 | 4364 | 2513 | |||||||
| TV | 5 | 230 | 511 | 552 | 429 | 543 | 419 | |||
| TVDC | 429 | 543 | 419 | 29 | ||||||
| SGジュニア | 2151 | 2395 | 2318 | |||||||
| SG TV/イエロー・ホワイト | 47+180シロ | 457シロ | 379シロ | |||||||
| スペシャル/イエロー・チェリー | 373 | 1345 | 1452 | 328+16 | ||||||
| スペシャルDC/イエロー・チェリー | 402+212 | 1209+612 | 1065+322 | 412+4シロ | ||||||
| SGスペシャル/チェリー | 452 | 959 | 1017 | |||||||
| SGスペシャル/ホワイト | 318 | 377 | 374 | |||||||
| ジュニア3/4 | 18 | 222 | 23 | |||||||
| ジュニア3/4DC | 158 | 199 | 96 | 71 | ||||||
※ジュニア、TV及びスペシャルはは58年途中からダブルカッタウェイになる。
※スペシャルは59年途中から名称のみがSGスペシャルに変更されている。
※TVの初期にはナチュラルに近いイエローが少なくとも16本はあったといわれる。
※各モデルには3/4モデルも含まれている。カタログ表記は56年から。
※SGジュニアは61年よりスタイルはSGであるが、ジュニア・ロゴが引き続き入るためレスポール・ジュニアもしくはSGレスポール・ジュニアと一般に呼ばれる。ギブソンのカタログ表記もレスポール・ジュニアのままであった。
※ちなみに58〜60年のスタンダードの生産本数はわずか1700本余りにすぎない。
そのシンプルに徹したスペックと低価格をもって、ソリッド・エレクトリック・ギターの一般化に寄与するというギブソンの目的は充分達せられたのである。
54年当詩の価格で89ドル50セントとスタンダード・モデルの半分以下という安価さも、ジュニアの成功の大きな要因だっただろう。
なお.レス・ポールという名前が付けられてはいるものの、スペシャルも含めたこれらのフラットトップ・モデルの製作に、当のレス・ポール氏はー切関与していない。
多彩なトーンと豊富な機能を持つギターが続々登場した80年代にあっても、この古色蒼然としたシンプルかつタフなスペックと独特なサウンドを求めるギタリストはあとを絶たず、86年にはついに再生産モデルが発売されるにいたった。
シンプルに徹した普及モデルとは言え,その作りにおいてはギプソンならではのクオリテイが守られている−これこそが,レスポール・ジュニアの衰えない人気の秘訣であろう。
ジュニアの魅力 -その魔性のトーン-
Character and Fascination
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レスポール・ジュニアはP-90 ギブソン・シングルコイルPUの暴力性とマホガニーのファットさがあいまって、中低音はレスボール以上の迫力を持っている。倍音が豊富であるゆえピッキングハーモニクスはバシバシきまるが、シングル・コイルPUの宿命でハム・ノイズは大きい。ジュニアは電気を通さない生鳴りはけっこうアコースティックな響きがするが、アンプを通した音もそのニュアンスを感じることができる。ジュニアのPUを通称P-90 DOG EARと言うが、これは形状が左右に伸びた取り付け穴部分が犬の耳に似ているのでそう呼ばれたのである。一方2PU仕様のスペシャルはSOAP BARと言い、名前の通り石鹸のようなのである。
ボディはマホガニーの単板、ネックもマホガニーで指板はローズウッドである。当時このモデルはスチューデント・モデルと称され、高価なレスポールの廉価版という位置づけであったが、やはり安かったことと、重量が圧倒的に軽いため、けっこう売れた。しかし、独特のトーン・ニュアンスとミュージック・シーンの変化ため、このギターはレスポール・スタンダードと同じく長らくロックの第一線では過小評価されてきたし、忘れられた存在でもあった。
ところが、生産中止から5年ほどたった60年代後期には、イギリス、アメリカで巻き起こったニュー・ロック・ムープメントの中で、多くの優れたミュージシャンたちがレスポール・ジュニアを愛用し始めた。
このギターが再び脚光を浴びたのは、フーのピート・タウンジェントやストーンズのキース・リチャーズなどがこのバリエイションのギターをロックンロールで使い出してからであるが、なんといっても画期的なのは、レズリー・ウエストがマウンテンでこのギターを使って状況が一変したのである。つまり、ロックンロール以上にロックにハードさが求められた60年代後半においてヘビー・ディストーションを出すことができるこのギターの存在はあらためて浮き彫りになったわけなのだ。
例えぱマウンテンのレスリー・ウェスト、ソロ時代のジョン・レノン、クリス・スペディング(DC)、イエスのスティーブ・ハウ、エアロスミスのジョー・ペリー、ハンプル・パイのスディーヴ・マリオット、ハードロック時代のゲイリー・ムーア、モット・ザ・フープルのイアン・ハンターやエリアル・ペンダー、パッド・カンパ二ー当時のミック・ラルフスやポール・ロジャース、キース・リチャーズ(SC、TV・DC)、ジョニー・サンダース(TV・DC)のようなロックン・ロール・ギタリスト達はメイプル・トップがないワンピース・マホガ二ー・ボディとシングルコイルのP‐90が生み出す、他のモデルでは得られないジュニアならではのユニークなトーン、つまり「歯切れが良いのに太い」という相反する要素が混ざった独特のサウンド・キャラクターに魅せられたのである。また近年においてもレス・ポール・スタンダードよりもこちらの方に愛着を持つというファンも多い。その後も一味違ったサウンドを求めて多くのギタリストがこのギターを使い出して、現在もけっこうな人気を保っているのである。
ジュニアと言うのは絶対的パワーは普通のハムバッカーモデルに劣るのにサスティーンの効いたアンプでボリュームを最大にすればそれよりも分厚い音が出るという魔法のギターである。この音の分厚さは音抜けが悪いと感じる人もおり、普通の弾き方では時にして手に余ってしまうが、それを補っているのが例のレズリー・ウエストのピッキングハーモニクスである。このギターの特性はハーモニクスがまた出やすいのである。加えてギターのトーンを絞ってネックよりでソフトに弾くとフロントPUがなくても甘いウーマントーンも出てしまう。このためレズリー・ウエストはFLYING VでもリアをハムバッカーからP-90に付け替えフロントマイクを取っ払ってしまっている。歪ませないクリーン・トーンではけっこう歯切れの良い音もする。ジャズ・ギターを想定してつくられたP-90の素性をここに見ることができる。昔のギタリストは50―60年代のワン・ボリュームのアンプでつまみをフルにしてギターのボリュームとトーンの細かい調節でいろいろ音を変えていたものである。
LP・ジュニアというのはギブソン系の音ではあるが、PUがシングルコイルということで独特の音色を持っている。中域に特徴があって、高音を弾いても中域が太っているために音が濡れた感じになって泣きが引き立ち、低音弦でパワーコード弾けばへたなレスポールよりも分厚いハードサウンドが得られる。その上、倍音がさらに豊かなためにピッキングハーモニクスが出しやすいわけだ。一方、クリーン・トーンでは芯がありつつも歯切れのよさを持っており、この「歯切れのよさと太さ」が同居するという特徴を生かすことがジュニアを使う上でのポイントである。
レズリー・ウエストがなぜ2PUのスペシャルをほとんど使わず1PUのジュニアにこだわっていたのか。つまり、P-90を使っていれば極端な話、フロントマイクはいらないのだ。あの音の分厚さは指板に近い方でやさしく弾けばソフトでメロウな音になり、ウーマントーンの場合はギターのトーンを0〜3にすれば十分それ風の音が出るわけなのだ。従来クラプトンのウーマントーンを説明するのに、リズム+リード、もしくはリズム単独でトーンを0か1にするというのが定説であるが、マウンテンの場合はリアのみでトーンコントロールでピッキングの強弱を微妙に変えながら様々な音を出していたわけだ。 ジュニアを弾いた人が「これにフロントがあれば・・・」と感想を述べる人がいるが、これはジュニアの特性をよくわかっていない人がいう言葉だ。
前述したように、ジュニア特有のサウンドというものがあって、これだけで強力な個性があるわけだが、その個性を十分承知した上でオールマイティに使えるギターでもある。確かにジュニアはその気があればレスポールぐらいの音も出せるポテンシャルを秘めているのであるが、そのためには意識してこういう音を出すんだというギタリストの意志と力量を要求するギターかもしれない。それだけマニア受けするギターと言える。ジュニアを面白く弾くコツはボリュームを1から10まで使ってクリーン〜クランチ〜ディストーションをギターだけでコントロールしたり、トーンを甘目にしてピッキングの強弱で音色をコントロールしたり、曲の途中で頻繁にトーンをいじることなのである。さらにブリッジよりでピッキングすることでアタックの効いた腰のあるトーンも出せる。これらの特徴を生かした上でオールラウンドという言葉も生きてくる。ジュニアのようなギターこそエフェクターなしのアンプ直で弾いて欲しいギターである。ジュニアとオール・チューブのアンプは相性は抜群なのだ。 で、以上のことを的確に表現しているのがマウンテンのレズリー・ウエストというわけである。とにかくこのギターはロックンロールやハードロックのみならずブルース・ロックにも十分使用に耐えるギターであると言えるだろう。
同じジュニアで50年代後期にはあのキース・リチャードで有名なダブル・カッタウェイのタイプも出たのだが、シングルカッタウェイの方がダブルの奴よりローからミッドの領域が太い音が出るようだ(聴覚上は聞き分けられないだろうが)。またサスティーンの観点からもシングル・カッタウェイの方が有利ではあると言える。ただしあえて比較すればこのように評価できるのであるが、ダブルを使って十分よいサウンドを聞かせてくれるミュージシャンも多いゆえ、スタイルの好みで選択しても間違いではない。
このジュニアについてるP-90は今けっこう見直されてて、外国・日本を問わずこのPUを取り付けたギターを使ってる人をよく見かける。マウンテンに影響された欧米のギタリストだけではなく、ブルースやサザン・ロック、ロックンロールなどを志向するギタリストにも人気は高く、今の日本の若いギタリストでもジュニアやスペシャル使っている人は多いし、名門ギブソンも近年レギュラー・ラインにこのPUをつけた新型ギターを新発売したり、ジュニア自体の完全リイシューを生産したりと、かなり潜在的需要は高いようだ。 オールドの価格も年々上昇している。
02/09/14